しない家事 / マキ

「しない家事」とは、かなりインパクトあるタイトルです。
「私は家事が苦手です。」と始まる冒頭にも、驚きます。そして
「料理・洗濯・掃除などいろいろありますが、なかなかやる気が出てきません。家事をする時間があるなら、ゴロゴロしながら本を読んでいたいし、子どもが昼寝をする横で私も一緒に寝たい、、、」
と誰もが日々の中で願っているだろう素朴な告白へと続きます。
しかし正直言うと、ここまで読んでも「でもこの本は、どうなの」と言う疑いがありました。実は。

「シンプルライフ」とか「断捨離」とか「片付け術」と言ったライフスタイルとメソッドを提案する本は今やゴマンとあり、効果的な言い回しを重ねたり、スタイリングされたライフスタイルを公開することで、多くの人が支持するカリスマありきの本や雑誌の特集も多く広く見かけます。そういう本や雑誌は、眺める楽しみや内容の手堅さはあっても、結局はあんまりリアルではない。自分ごとになりにくいなと思ってしまいます(職業柄の意地悪目線付きですみません)。それゆえ、興味あるから読んでみるけど一読して終わり。つまり「シンプルライフっていいなあーステキー」と言う他人事で終わるかも、、の気持ちが「どうなんだろ」に混じっていた訳ですが、最後まで読んで、その印象は違うものに変わりました。

さっぱりとした文体、淡々とした言い切り口調がとても読みやすくて、あっというまに最後まで読みきることができます、この本。全編を通し読みした後に気になるところに戻ったり、パラパラめくって図や写真だけをちらっと見たり、と言う楽しみ方ができて、時間のないひとにも嬉しい作り。なんなら目次をたまに見るだけでも、かなりハッとします。

著者のマキさん、は広告代理店勤務のワーキングマザーで、2人のお子さんと旦那さんと都内で暮らされているそう。冒頭では、家事が苦手でゴロゴロしてたい、なんておっしゃっていますが、バリバリと企業にお勤めされていて、近所におじいちゃんおばあちゃんがいる訳でもない、子供達は保育園と公立の小学校通いで夫婦で共働き、という典型的な都心型核家族。
お子さんの育ちに合わせて時短勤務などを取り入れてはいるものの、出産を経てなおキャリアを捨てることなく働き、その中で自身にとっての「快適で心地よい暮らし」をどうにか回していこうと試行錯誤する母さん像はとても現代的で、リアルな「お隣感」を感じます。

著者はワーキングマザーである傍らに「シンプルライフ研究家」を名乗っておられ、ブログも大人気ですごいPVを誇るそうなのですが、ご本人の大切にするところはあくまで「家族との時間」であり「自分のやりたいことをやるために、家事に振り回されない」「余計な物を持ってあたふたしない」に徹しているのが潔く、ハッとさせられるところ。
誰かに期待しすぎない、疲れてしまう自分もうまく許す、無理を背負いこまない、という基本姿勢は、働きながら暮らす中で男女関係なく誰もが必要なスタンスではないかと思います。

個人的に刺さった章タイトルは
・できる主婦のイメージに縛られない
・今しなければいけないこと以外をしない
・重要なことほど後回しにしない
・平日は手の込んだものをつくらない
・「ママ来て」にはすぐ応えるのが結局はやい

などなど。ちょっとドキッとしませんか?

ここまでは自分は思い切れないな〜というところはあっても、この本を読んで自分の暮らしも見直そう、という気になれるのは、暮らしの中で現実的にぶち当たるあれこれに即したネタが豊富で、「こうしなくちゃ」「こうあるべし」という思い込みを1つやめるだけで、ずいぶんとラクに楽しくなるのね、という納得や具体的なエピソードが織り込まれていることも大きいように思います。
忙しい中で「何を大切にするのか」という問いの元、暮らしの組み立て方のコツとなる考え方がいくつも書かれており、お子さんがいる人も、いない人も、これから結婚・出産を考えている人にとっても、シングルマザー、シングルファザーにもおすすめ。
「しない」「やめる」ということがポジティブに、シンプルに書かれた良本です。



○すばる舎
○2016年出版
○176P ソフトカバー

価格 1,404円(税込み)
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